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   四季の変化に富んだ国、日本は

   世界に冠たる紅葉の美しい国としても知られている。

   だが今年は、度重なる台風の襲来や異常気象、温暖化の影響などもあって

   各地から届く紅葉便りが、今ひとつパッとしない。

   紅葉の色が冴えないのである。


   
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   せめて1度くらいは、歓声をあげるような見事な紅葉が見たいと

   北海道に飛んだ。

   結論から先に言えば、北海道の紅葉とて同じだった。

   例年と比べると明らかに見劣りする。

   9月下旬に日本一とも称される大雪山の紅葉をネットで見て

   こりゃダメだ。と感じていた。

   同様に北アルプスの涸沢の紅葉も、輝くような透明感がなかった。

   いずれの場所でも私は過去に、まごうかたなき日本一、と絶賛できるほどの見事な紅葉を撮影している。

   そんな経験もあって、紅葉に関してはかなり厳しい眼で見ている。


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   飛行機が高度を下げて北海道の上空にさしかかる。

   機内から眼下を眺めて、冴えない色だな、と思う。千歳の上空から紅葉した様を見て

   やはり期待できないな、と残念だがそれは確信に変わった。

   予報では天気も今一歩だし、今回は温泉三昧かぁ、と残念な気持ちと、のんびりしよう、という気持ちが

   複雑に絡み合う。

   今回は定山渓温泉の中の朝日岳に登ろうと思ってやって来た。

   展望のきく山ではないが、広葉樹の林は紅葉していれば見事なはずである。


   
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   連泊したホテルの、我が部屋から見た朝日岳である。

   晴れ男が来たからではないと思うが、予報に反して晴天となった。

   登山口が近いこともあり、比較的のんびりと朝食を済ませた。

   コンビニで昼食や飲み物をゲットして、ゆっくりと歩きはじめる。

   何しろ時間だけはたっぷりとある。

   急ぐ必要などないのである。


   
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   温泉街の周辺ではツルアジサイが優しい色合いに染まっていた。

   春先ならば林床に、カタクリやエゾエンゴサクが咲き溢れる場所である。

   昨夜の雨のせいか、まだしっとりと濡れている。

   鮮やかな赤も素敵だが、こんな落ち着いた色合いの紅葉も

   心を豊かにしてくれる。


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   少し強い風が吹くと、色づいた葉はツルからごく自然に外れて、落ち葉となって風に舞う

   日陰は心なしか肌寒い。

   よく見れば、まだ花の塊の残骸も見える。

   ノリウツギほどの見事なドライフラワーにはならないが、葉がすべて散ってしまうと

   からみついた太い樹の途中に、アジサイのような花柄がよく目立つようになる。

   さて、岩戸観音堂に参拝したら、いきなり急な階段で朝日岳の登山ははじまる。

   階段を登り切って、入山届の箱があるあたりから細い山道となる。

   この辺りの下草はまだ青々としている。

   果実をたくさんつけたオオウバユリがよく目立つ。


   
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   オオウバユリには、まだ調べなければならない宿題が残っている。

   折に触れあちこちで調べているのだが、オオウバユリに球根はあるのか、という問題

   特に北海道のものには大きな球根があると言われているので、それを調べたくて

   今回も掘ってみる。まだ結論を出すに至ってはいないが、この時期のものは

   私が想像していた通りだが、たった1本を掘ってみただけでは参考にもならないので

   何本か掘ってみる。

   もちろん掘った後は丁寧にそのまま埋め戻す。


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   裂開した果実からは、バラバラと面白いほどたくさんの種子がこぼれだす。

   茎を持って振ると、まるで打ち出の小槌のようだ。

   そんな調査も兼ねながら登って行く。

   それにしてもどうも色に冴えがない。このくすんだ色は一体どうしたことか。

   葉が見事に紅葉する条件は、第一に昼夜の温度差である。

   温度差があるほど見事に色づくのだが、今年はどうもいけない。


   
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           イタヤカエデ





   食指の動く紅葉が見つからない。

   デジカメの出番がないまま、山を登ってゆく。

   しびれを切らして、赤い小さな実が目立つアクシバを最初のデジカメの被写体とした。

   まだ赤ちゃんの小さなハウチワカエデだけは、それなりに紅葉している。

   地面近くだと放射冷却によって温度が下がるのかも知れない。


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   雲が動いて青空が広がり、陽射しもかなり射し込むようになってきた。

   標高があがるにしたがって、木々の葉の色も鮮やかに濃くなってきた。

   太陽の光りは、なんとも偉大である。

   透過光によって、つまり紅葉を葉の裏側から眺めることによって、より赤さや美しさが際立つのである。

   紅葉をより美しく撮るには、葉の裏側に回り込むことなのである。


   
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   紅葉の帯の幅はそれほど広いものではない。

   山のてっぺんからはじまった紅葉は、だんだん麓へと降りてゆく。

   ちょうどこの辺りがいま最盛期かな、と思えるあたりで

   やっと三脚を伸ばして、少し粘るか、と思う紅葉に出会った。


   
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   モミジの種類はハウチワカエデである。

   北海道のモミジを代表する種類で、紅葉するモミジの中では、最も葉が大きい。

   黄色く色づくイタヤカエデなども北海道を代表するモミジの種類だが

   やはり紅葉は何といっても赤がいちばんである。


   
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   青い空と白い雲の流れを眼で追いながら、シャッターチャンスをじっと待つ。

   その合間にスマホでパチパチ。

   陰れば陽が射すまでじっと待つ。

   ともかく撮影は忍耐。構図が決まればただ待つだけ。

   この場所で1時間ほど粘っただろうか。


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                                                 ハリギリ


   少しだけ納得して、再びザックを背負い歩きだす。

   登るにしたがって紅葉の最盛期は過ぎてゆく

   木の間越しに見える天狗岳の岩峰も、もう紅葉の色はない。

   何とも甘い香ばしい匂いに、ふと足を停める。

   散り敷いた黄色い葉と、カルメラのような懐かしい香り。

   カツラである。


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   抱きかかえることなど、とうてい無理と思える大木が道脇にデンと構えていた。

   見上げるといちめんの黄葉。

   わずかな風にハラハラと舞い落ちてくる。


   
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   はらはら、ハラハラと風に舞って

   静かに地面に降り積もる。

   散り敷いた落ち葉が幾重にも重なって

   自然が見せる束の間の美

   朽ちてゆく前の仄かな息遣いが聞こえる。


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   今まで上ばかり見て歩いてきたのに、今度は下ばかりキョロキョロしながら歩いている。

   落ち葉の種類が気にかかる。

   上の左画像は、緑色をしたクジャクシダの上に降り積もった赤いヤマモミジ

   黄色いカツラ、ミズナラなどなど。

   左画像は、白い葉裏を見せた大きな葉のホオノキ、ややオレンジ色を帯びた黄色のイタヤカエデ

   黄色いカツラやヤマモミジなどである。

   これらの葉はやがて土に帰って行くが、自然は次世代へと命を繋ぐ用意もしているのである。


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   熊の好物でもあるミズナラの果実(ドングリ)は、落下してすぐに根を出す準備をしている。

   上の左画像をクリックして見ると、ドングリからすでに赤い根が伸びだしているのがわかるだろう。

   冬が来る前に、すでにしっかりと越冬の準備を整えているのである。

   降り積もる落ち葉の中で、ドキッとするほどの透明感のあるこの葉は、コシアブラの赤ちゃんである。

   落ち葉の腐葉土を養分として、少しずつ成長してゆく。

   自然はゆるやかに、世代交代の準備もしっかりとしているのである。


   
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   結局この日、頂上に着いたのはコースタイムより、3倍ほどの時間がかかっていた。

   紅葉以外にシダの撮影をしたり、落ち葉を拾ってみたり、一人だけなのをいいことに

   思い切りマイペースの登山だった。

   朝日岳は手軽に登れる山だが、秋は日が短い。

   下山する頃になるとさすがに肌寒く、Tシャツの上に長袖を羽織った次第である。

   例年と比べれば見劣りはするものの、こうして素敵な部分だけを取り出して見れば

   まあまあの紅葉だったのではないかと思っている。


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   思いがけず天気にも恵まれて、ご機嫌な1日を過ごすことができた。

   宿が近いこともあって、午後の4時には露天風呂に浸かって、思い切り手足を伸ばしていた。

   短いながら楽しい旅となった。様々なことに、感謝、感謝である。











   撮影は2018年10月18日 北海道定山渓、朝日岳周辺で。

   撮影はすべてスマホのカメラで撮ったものです。

   画像はクリックすると大きくなります。大きな画面で臨場感をお楽しみください。

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カテゴリー 旅行、アウトドア
ラベル 風景植物
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